1.ついに始動

「ゴルフはやらない!」とアメリカのとある田舎町のホテルで心に決めてから約一年後、ロサンゼルスに駐在していた入社同期の友人のKを家族で訪ねました。
当時は今に比べればいい時代で、彼も時間がありゴルフにはまっていました。金曜日は夕食の前に近所のコースでハーフを回るのが習慣になっていて、渋る私を 「いやになったら打たずにコースを散歩するだけでも気持ちいいから」 と連れて行ってくれました。確かにカリフォルニアの空の下で広々としたコースを歩くのはとても気持ちがよくショット自体は初回と同じで無茶苦茶でしたが、楽しい思い出となりました。(同じ組で回った上手なアメリカ人には気の毒でしたが…)

思い出は思い出として心に刻みましたが、根がモノグサなせいかあるいは初回の印象があまりにも強烈過ぎたせいか次に私がクラブを握るのはそれから6年後になります。NY郊外に駐在して2年目、かなり環境にも慣れてきた頃です。妻が駐在員の奥様方の奨めでゴルフをやりはじめていました。郡営のコースが4つあり$20以下でラウンドできるという環境にいたおかげです。(駐在員の妻は働けないのでかなり時間がある、というのも大きいですが…)ある日帰宅すると妻が
「はいプレゼント!」
と言って古ぼけたゴルフバックを私の前に置きました。
「ガレージセールで$10だったのよ。ゴルフ始めましょう。」
妻は車の運転が苦手で少し遠くにあるゴルフ場や練習場への運転を私にやってもらいたかったようで、そのためにはゴルフをはじめさせるのが一番!という結論に至ったようです。何故かそのときはロサンゼルスの事が思い出され「そうするか」と早速週末練習場に夫婦ででかけたのでした。
その頃は仕事が忙しく出張がちでなかなか練習もできず、ゴルフをやっているようなやっていないような状況(1.5ラウンドしただけです。)でNYの早い冬がやってきてしまいました。マンハッタンから北に車で1時間くらいのところでしたが冬場は氷点下でゴルフどころではありません。そうこうするうちにその年の暮れに帰国が決まり、またしばらくゴルフとは縁の無い生活にもどってしまいました。

再び6年の歳月が流れました。仕事上の変化が激しくまた子供も学校に通い始めゴルフの事はまったく頭に無いまま2002年の夏休みにマウイにでかけました。カパルアビラというゴルフで有名なところにたまたま宿泊しました。部屋でビラのパンフレットを見ているとゴルフアカデミーが併設されていてなかなか気持ちがよさそうでした。旅先の気楽さもあり長男(当時中二)を連れて1時間の超初心者レッスンを受けてみました。海を見下ろす丘の上からマウイの風を受けながら親子で無心にボールを打つというのはなかなかいい経験でした。

といって、日本で練習を始める事もなく2003年を迎えました。不思議な事に私が仕事でお付き合いさせていただいている皆さんはゴルフをお好きな方が多く、
「早くゴルフ始めようよ!」とか 「いつまで待ってればいいのかなぁ…」といった激励の(?)お言葉を年が明けてから多く聞くようになりました。
「いずれそのうち…」とか 「近いうちに…」と曖昧なことを言っていたのですが、ある日
「まずいんじゃないの?」と大阪から転勤してきた同僚のIが言い始めました。
「これだけお客様に言われるんだから、もうこれは仕事!」
「仕事と思えばなんでもできるでしょ!」
と嵐のような攻撃が毎日続きました。確かにせっかく楽しみにされているお客様のありがたいお言葉に曖昧に返答しているのは申し訳ないと感じていました。さらにIの席が隣だったこともあり(うるさかったってことです…笑)ついに説得され、まじめにゴルフを始動することに決めました。

前回中途半端で終わっている反省から、Iは
1)最初にスクールに入る事
2)毎週クラブを握る事
3)よいクラブを最初から買うこと
を実行するように求めました。週に二回くらいは残業を変わってくれて私が平日にレッスンを受けられるようにしてくれるとも言ってくれました。ありがたくて涙が出そうでしたが、この部分は未だに実現していません。泣かなくてよかった。始動を決めてから今まで、最初の3点はほぼ実行しています。さらにもう一点私なりの保険をかけることにしました。一年前の事を思い出したのです。親子で始めれば子供への見栄もあり一生懸命練習するに違いない、という事です。たまたまクラブをやめて暇そうにしていた長男に声をかけると珍しく
「あ、いいよ」との答え。走ったりしないのでずぼらな息子(親子ですねぇ…)には楽なスポーツと思えたのかもしれません。あるいはこれなら父に勝てる、と思ったのかもしれません。ともかく子供を巻き込んで私のゴルフへの最後の挑戦が始まりました。


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